日本酒のきほん

古酒・熟成古酒・長期熟成酒ってどんな日本酒?

日本酒は鮮度が大切、と一般的には言われますが、実は日本酒には「古酒」と呼ばれる長期間保存して熟成させたお酒もあります。

通常、日本酒が美味しく飲める期間は製造されてから1年程度とされていることが多いのですが、日本酒はアルコール濃度が高いため基本的には腐らないので、賞味期限や消費期限の設定もありませんので飲むことは可能です。。

それどころか、日本酒を長期間熟成させることによってヴィンテージワインのように味を変化させることもできます。

そのような日本酒は熟成古酒(古酒、長期熟成酒)と呼ばれます。

 

古酒ってなに?

古酒の普及や技術の向上を目的に設立された「長期熟成酒研究会」という団体があります。

長期熟成酒研究会

参考:長期熟成酒研究会

http://www.vintagesake.gr.jp/

「長期熟成酒研究会」による定義によると、古酒とは「満3年以上酒蔵で熟成させた、糖類添加酒を除く清酒」とされています。

古酒は吟醸酒や純米酒を規定している「特定名称酒」のように、酒税法で定められているわけではなく、業界の人たちが独自のルールで定義づけられたやり方で熟成したお酒になります。

熟成の期間はお酒の種類によってさまざまです。

7月1日から6月30日までの間に作られた日本酒を「新酒」、それが翌年の7月1日まで貯蔵されたものを「古酒」と定義されています。中には何十年も熟成させた古酒もあります。貯蔵後5年、10年経った古酒のことを熟成酒、熟成古酒と呼ばれています。

最近、熟成肉のブームのように熟成させた食品のブームもあり、徐々に支持が広がっています。

 

 

3タイプの熟成古酒

熟成古酒の味はどのような特徴があるのでしょうか。

長期熟成酒研究会では以下のように分類されています。

タイプ 醸造方法 熟成温度 特徴 相性の良い料理
濃熟タイプ 本醸造酒
純米酒
常温熟成 熟成を重ねるにつれ、照り、色、香り、味が劇的に変化、風格を備えた個性豊かな熟成古酒 中華料理、脂分の多い料理、濃厚な旨みと甘みのある食べもの(ビターチョコレート、焼肉、ブルーチーズ、焼き鳥(タレ)、カレー)
中間タイプ 本醸造酒
純米酒
吟醸酒
大吟醸酒
低温熟成と常温熟成を併用 低温熟成から常温熟成へ、またはその逆の貯蔵法により、濃熟タイプと淡熟タイプの中間の味わいを実現した熟成古酒 ほどよい甘味、酸味、苦味のある食べもの(酢豚、牛しゃぶしゃぶ、干しぶどう、チョコレートなど)
淡熟タイプ 吟醸酒
大吟醸酒
低温熟成 吟醸酒の良さを残しつつ、ほどよい苦味と香りが渾然一体となった、幅のある深い味わいの熟成古酒 フランス料理、甘味・脂肪が少なく旨み成分が多い食べもの(生ハム、イカの塩辛、ロールキャベツ、グラタン、チーズなど)

 

参考:長期熟成酒研究会 熟成古酒

http://www.vintagesake.gr.jp/aboutvintagesake/

 

古酒の味の特徴

深い味わい

熟成古酒は熟成が進むにつれて、もともと日本酒に含まれているアミノ酸などの成分が変化して「熟成香」と呼ばれる香りを発するようになり、深い味わいになります。日本酒のキレは残しつつ口当たりの柔らかくなります。また色も鮮やかな黄金色になります。

熟成香は熟した果実のような香りといわれることが多く、熟成させる期間が長くなるほど強くなります。香りが強すぎると感じる場合もあるかもしれませんので、慣れないうちは熟成期間が短いものから試してみるのが良いかもしれませんね。

二日酔いになりにくい

日本酒は熟成させるとはアルコールと水分の結合が進むことによって、アルコールの分子構造が変わると言われています。

そのため、体への刺激が弱くなり、悪酔いしづらく体が分解しやすいアルコールになるという特徴があります。

温度によって味わいが変わる

古酒はアミノ酸などの含有量が多いので飲むときの温度帯による味わいの変化を感じることができます。

お燗にすることで古酒ならではの香りと味わいの変化を楽しむことができます。。もし香りが強すぎると感じる場合は、少し冷やすと香りが抑えられます。もちろんお酒に酔って個性はさまざまなので丁度いい温度を探して飲む楽しみもありますね。

初めて古酒を飲む場合は、人肌燗(35℃)からぬる燗(40℃)くらいの温度にするのが、柔らかい口当たりになって飲みやすいと思います。

料理との相性

古酒の濃いな味わいと香りは、濃厚な味の料理と合います。

中でも、濃熟タイプは紹興酒に近い味わいの物もありますので中華料理と合わせるのも美味しいですし、中間タイプは酸味や甘みを効かせた料理と合います。淡熟タイプは乳製品のような旨味のある料理と相性が良いと言われています。

 

古酒・長期熟成酒の最近見直されてきている

江戸時代以前では一般的だったそうですが、それ以降から1900年代半ばまでの期間にかなり少なくなってしまいました。

当時の税制はお酒を造った段階で税金がかかるシステムだったのも原因の1つです。貯蔵中にお酒が変質して売れなくなると大損になってしまうため、作ったお酒は早く売る必要がありました。現在は「蔵出し税」でお酒を販売したときに税金がかかるシステムなので、税制面でも古酒、熟成酒を作ることが可能になったという側面もあります。

また、長い時間熟成させるためには、醪(もろみ)をしっかりと発酵させたちゃんとした作りのお酒である必要があるのですが、戦後の期間に三倍醸造といわれるような品質の悪いお酒が流行するなど、長期熟成に耐えられるお酒が流通しなくなってしまったことも原因の1つです。

最近は、しっかりとした品質のお酒を造っている酒蔵が増えてきているので、美味しい熟成古酒を楽しめる機会が増えてきました。

もっと美味しい酒を飲める環境が整ってきていて良い時代になりましたね。

 

-日本酒のきほん
-, ,

Copyright© 日本酒愉楽 , 2024 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.