日本酒のきほん

日本酒の「貯蔵」と「熟成」 日本酒造りの仕上げの工程を解説

アルコール発酵が終わった醪(もろみ)を搾ることで酒粕と分けられた日本酒は、そのあと火入れ(加熱殺菌)を行った後に「貯蔵」されます。

「貯蔵」はただお酒を保存しているというわけではなく、実は日本酒造りの工程の一部なんです。

醪(もろみ)を搾った後のお酒は通常、火入れ(加熱殺菌)を行った後にタンクにて貯蔵されることになります。

 

「貯蔵」は日本酒造りの工程の一部

通常、日本酒は搾った後で数か月保存した後に出荷されます。この保存する工程を「貯蔵」といいます。

搾りたての日本酒はアルコールが水分となじんでいないために、刺激が強く角が立った味わいに味わいになっています。

日本酒をしばらく貯蔵して熟成するすることで、アルコールが水の分子となじんでで味に丸みが出て美味しくなるのです。

つまり、お酒を出荷前に貯蔵することは日本酒造りの1つの工程なんですね。通常の日本酒は15℃前後の温度の光が当たらない場所に保管されることになります。

貯蔵して飲み頃になったら、再び火入れを行った後に瓶に詰められて出荷されます。

なぜ日本酒を一定期間貯蔵しておくことで美味しくなるのかということについての

「貯蔵」されていない「新酒」

醪(もろみ)を絞った後火入れも貯蔵しないで出荷されるお酒を「新酒」と呼ぶことがあります。(生酒の一種になります)

このようなお酒は火入れ(加熱殺菌)をしないため、お酒の質の変化(劣化)がしやすいお酒です。

そのため、高度技術を用いたなろ過フィルターや無菌室の使用などで、発酵を勧めてしまう酵母や火落ち菌と呼ばれるアルコールに強い雑菌を除去しています。

そして、流通、出荷に至るまで冷蔵保存されることが基本になります。(購入した後にも冷蔵庫で保存してくださいね)

このような現在の高い技術を用いることで、昔は酒蔵の近くに住んでいる人しか飲めなかった新酒がスーパーや酒店で購入できるようになっているんですね。

新酒の定義はいくつかある

新酒という言葉は

①お酒が造られた年度(7月1日から翌年の6月30日の間)に出荷された日本酒

②秋に収穫されたお米で一番に造られた日本酒

という2つの意味で用いられることがあります。

通常は①の意味で用いられることが多いようです。

 

熟成とは

日本酒をよりおいしくするために「貯蔵」しておいておく工程のことを「熟成」といいます。

ワインやウイスキーなどのお酒も何年もの間寝かせてから飲まれることが多いですよね。最近ブームになっている熟成肉も、牛肉を「熟成」させることでより美味しい状態にしたお肉になります。

熟成」とはこのように、時間を置くことで食品や飲み物が美味しくなることを指しています。

 

通常日本酒では、半年から1年ほどお酒を貯蔵している間に飲みごろの味わいに熟成させた後に出荷されます。

日本酒が貯蔵させるのはこの「熟成」させることが目的なんですね。

ちなみに、製品の出荷後に、保管状態が悪いために火落ち菌などの影響で発生する色や香りなどの変化は「劣化現象」で、品質向上を目的としている「熟成」にはなりません。美味しくならない変化は熟成とは言いません。

「貯蔵」「熟成」も単純ではない難しい工程だということがわかりますね。

 

例えば「ひやおろし」と呼ばれているお酒は、冬に造られたお酒を半年ほどのあいだ貯蔵した後の秋に出荷されるお酒です。

ひと夏の間熟成させることで旨味とコクのある味わいになります。

そして、さらに貯蔵・熟成を進めると「紹興酒」のような重厚な味わいになり。色も山吹色や黄金色に例えられる色に変割ります。新酒の段階では無色透明ですが、熟成が進むにつれて濃くなっていきます。

最近では、10年、15年と貯蔵させた長期熟成酒も商品化されており、熟成により生じる色や香味もひとつの個性として楽しまれています。

 

純米酒を極める』(光文社知恵の森文庫)を書かれている上原浩氏は、気に入った日本酒があったら自宅で保存することで「熟成」させるそうです。このように、若いお酒を自宅で長期間熟成させることは日本酒のマニアの人の間では行われているそうです。

 

まとめ

・日本酒は搾った後、数か月間「貯蔵」されてから出荷される。

・日本酒を「貯蔵」して「熟成」させるのは日本酒造りの重要な工程

牛肉の場合は、牛肉自体に含まれている酵素がたんぱく質を旨味の元であるアミノ酸に変えることで美味しくなるそうですが、日本酒が熟成すると美味しくなる理由については完全に解明されているわけでは無いそうです。

日本酒の貯蔵、熟成も、職人の知識と経験に基づく日本酒造りの大切な工程の一部なんですね。

 

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