日本酒には甘口と辛口があります。辛口の日本酒の方が人気と一般的に言われることが多いようです。
お酒の甘口辛口は「日本酒度」が1つの目安にされていて、お酒のラベルにも日本酒度が表示されているものがありますが、実際は日本酒度だけで甘辛が決まっているわけではありません。
ここでは日本酒の甘い辛いについて解説してみます。
日本酒度とは
甘口のお酒を実際に飲んでみると文字通り甘く感じられますが、辛口は実際に辛いわけではなく「甘くない」ということが多いようです。(実際に糖分が多く含まれている甘いお酒もあります)。
日本酒度とは元々日本酒の比重を示すために作られた独特の単位です。
4℃の水(水はこの温度で最も重く比重1になります)。
15°の日本酒を比較して同じ重さの場合「日本酒度0」として、それより軽いものをプラス重いものはマイナスで示します。
日本酒度は概ねプラス10からマイナス10の間の数値になります。
日本酒の比重は、主に糖分がどれだけ含まれているかで決まります。多いほど比重は大きくなります。
マイナスの数値が大きいほど糖分が多く、プラスの数値が高いほど糖分が少なくなります。
つまり、甘口の日本酒を飲みたいなら日本酒度がマイナスの数値が大きいもの、辛口が飲みたいならプラスの日本酒を選べば良いということになります。
日本酒度と甘さ辛さの目安
ポイント
おおまかな日本酒度と甘さ辛さの目安はこんな感じです。
-5°〜-10°:超甘口
-3度〜-5度:甘口
-1度〜-3度:やや甘口
0度:普通
+1°〜+3°:やや辛口
+3°〜+5°:辛口
+5度〜+10度:辛口
実際には、醸造された日本酒にはアルコール度数を調整するために水が加えられたり、醸造アルコールを加えて作られますので、必ずしも日本酒度とお酒の甘い辛いがそのままリンクするわけではありません。
日本酒度は日本酒の甘い辛いを示す一つの目安と考える方がいいのです。
酸度とは
日本酒度のほかに日本酒の甘い辛いに関わるものとして酸度という指標があります。
酸度とは、酒の味に酸味や旨味をもたらす有機酸(乳酸、コハク酸、リンゴ酸など)の量を相対的にあらわす数値です。
実際に舌で感じる甘い辛いの感覚は、必ずしも糖分だけで決まるわけではなく酸味の強弱が関わってくるのです。
糖分の量が同じでも、酸が少ない方がより甘く多い方が辛く感じます。
甘口辛口には日本酒度のほかに酸度も1つの大きなポイントになってきます。
日本酒度・酸度と日本酒の味わいの関係
日本酒度と酸度の関係は、大まかにこんな感じになります
ポイント
日本酒度が高い・酸度が高い:【濃厚 辛口】コクがあってキレがある
日本酒度が高い・酸度が低い:【淡麗 辛口】さっぱりしていてキレがある
日本酒度が低い・酸度が高い:【濃厚 甘口】コクがあってまろやか
日本酒度が低く・酸度が低い:【淡麗 甘口】さっぱりしてまろやか
ラベルの表示を確認して比べてみると、日本酒の大まかな味わいの傾向がわかります。
科学的に研究された新しい指標「新甘辛度」
一口に糖分と言っても、糖分の中にはグルコース(ブドウ糖)のような甘く感じる糖と、オリゴ糖などのように甘さを感じにくい糖があります。
日本酒度が同じでも、日本酒に含まれている糖分の質の違いによって味が全く違ってきます。
例えば、日本酒度がプラスでもグルコースがたくさん含まれているために、飲んでみると意外と甘く感じる、というお酒もあったりするわけです。
そのような背景から最近では「独立行政法人酒類総合研究所」が、新たな日本酒の甘い辛いの指標として 「新甘辛度」という指標を提案しています。
新甘辛度とは簡単に言うとグルコースから酸度を引いた値のことです
新甘辛度の計算方法
新甘辛度の計算方法は
【グルコース濃度(100ミリリットルに何グラムの のグルコースが含まれているか)】
から、
【酸度】
を引いた数値のことです
ポイント
新甘辛度の数値の指標
甘口:1.9以上
やや甘口: 1.1から1.8
やや辛口:0.3から1.0
辛口:0.2以下
自分で計算しないといけないのが若干面倒くさいですが(笑) 、科学的に分析された甘い辛いの指標ですので、興味があったら参考にしてみてください。
日本酒にこのような科学的な分析がされているということに驚かされますね。
参考:清酒の甘辛区分表示について(独立行政法人酒類総合研究所)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1988/99/12/99_12_882/_pdf/-char/ja
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まとめ
日本酒の甘い辛いについて説明してきましたがいかがだったでしょうか?
以上の指標は、大まかな指標にはなっても、すべての日本酒がこの指標通りの味になるとは限りません。
数字で測れることももちろんありますが、やはり日本酒は日本酒は飲んでみなければ味わいは分からないです。
このような指標を参考にしつつ、自分にとってのお気に入りを見つけるヒントにしてみるのがおすすめです。
甘い辛いにだけにこだわらずに、いろんなお酒との出会いを楽しんでほしいなと思っています。
・日本酒度と酸度、新甘辛度は甘い辛いの味わいの1つの指標となる
・日本酒の味わいは、数字で測れる甘い辛いだけではない複雑な要因で形作られている