日本酒は主に米と米麹と水というシンプルな材料で作られています。
そのため、米の良し悪しがお酒の品質に大きく影響することになります。
食べるためのお米は、コシヒカリやひとめぼれが有名ですが、実は食べて美味しいお米が美味しいお酒になるとは限りません。
お酒を造るためのお米は「酒造好適米」と呼ばれ、日本酒専用のお米として作られています。
ここでは「酒造好適米」について説明と、代表的な品種を生産量順に5つご紹介します。
目次
酒造好適米(酒米)の特徴
まず最初に、酒造好適米の特徴についてあげてみます。
1、精米しやすい
日本酒を作る時には、お米を玄米の状態から50%以上削ることもあります。
これだけ削っても大丈夫なようなしっかりとした大粒で、均質であるという特徴があります。
2、水を吸い込みやすい
お米の粒が割れにくく、 どれぐらい水を吸わせるかの調節が行いやすい特徴があります
そのことによって、お酒造りに好都合な良い蒸し米が作りやすいです。
3、タンパク質が少ない
酒造好適米はでんぷん質の比率が高くタンパク質が少ないという特徴があります。
タンパク質はお酒の旨味になりますが、大過ぎると雑味の元になってしまいます。
タンパク質が少ないお米の方が、雑味が少ないクリアで上品な飲み口のお酒が造りやすくなります。
4、麹が生育しやすい
お米の内部が柔らかいので水分を保ちやすく、麹菌が中に入りやすいと言う特徴があります。
酒造好適米(酒米)は心白部分が多いという特徴があります
心白とは、お米の中心部にあるでんぷん質の隙間が大きい組織のことです。
このため、麹菌が繁殖しやすい他にも、吸水性がいい、酒母やもろみの中で溶けやすいなどの特徴があります。
ちなみに、食べるための米には心白部分はほとんどありません。
酒米を食べると美味しい?
食用米も酒造好適米も同じジャポニカ米と呼ばれる日本型のお米です。
しかし。食用の米と酒造好適米はデンプンの質に違いがあります
食用のお米は、適度に粘り気があって柔らかい食感があり、ご飯だけで食べても美味しく感じますが、酒造好適米は日本人の口にはパサパサして固い食感で美味しくないと感じる人が多いそうです。
酒造好適米は、お酒にすることで持ち味が活きるお米なんですね。
代表的な酒造好適米(酒米)を生産量順に紹介
どのような品種の酒造好適米が、 どれくらい作られているのかということについては、農林水産省が発表しています。
資料:農林水産省 酒造好適米の農産物検査結果(生産量)と29年産の生産量推計(銘柄別)
http://www.maff.go.jp/j/seisaku_tokatu/kikaku/pdf/29sake_seisan03.pdf
それでは、初心者はとりあえずこれだけ覚えておけばOKともいえる、代表的な酒造好適米の銘柄を5つご紹介します。
第1位 山田錦(やまだにしき)
現在日本国内で最高の品種とされているのが、山田錦です。生産量も日本で一番多いです。
山田錦は兵庫県で生まれたお米で、良いお酒を作るための米として生まれました。
発酵がゆっくり最後まで進む麹ができると言う特徴があるので、70年ほど前に誕生して以来、日本最高の酒米とされています。
山田錦を使うと、味や香りが豊かに広がるお酒に仕上がると言われています。
栽培するのが難しいのも特徴で、現在は食べるための米であるコシヒカリよりも高価になっています 。
近頃大人気となっている『獺祭』(だっさい、山口・旭酒造)も山田錦を使って作られたお酒です。
第2位・五百万石(ごひゃくまんごく)
新潟県が発祥の品種で、新潟県の米生産量が五百万石を突破したことを記念して命名されたお米です。
山田錦に次ぐ生産量のお米となっています。
クセのないすっきりとした味わいのお酒に仕上がるのが特徴です。
第3位 美山錦(みやまにしき)
山田錦、五百万石に次ぐ生産量なのが美山錦です
秋田県や長野県で吟醸酒としてよく使用されているお米となっています。
寒い地域で栽培するための新しい品種を生み出す元の品種にもなっていて、越の雫、出羽燦々、神の舞などの品種が子孫として誕生しています
第4位 雄町(おまち)
岡山県で生まれたお米です。現在も多くが岡山県で生産されています。
江戸時代の末期に生まれた歴史の古い品種ですが、最近の日本酒ファンにも根強い人気があるそうです。
山田錦や五百万石など、有名な酒造好適米の交配に使用されているなど、多くの酒造好適米が雄町の子孫です。
心白が大きいのが特徴で、コクが深い味のお酒ができるという特徴があります。
第5位 秋田酒こまち(あきたさけこまち)
生産量5位は秋田県が誇る秋田酒こまちです。
1992年に誕生した秋田県のお米です。
タンパク質が少ないことで、雑味が少ない上品なお酒ができる特徴があります。
生産量順では、第6位 八反錦1号 (はったんにしき1ごう 広島産)、第7位 出羽燦々(でわさんさん 山形産)と続きます。
地元産の米を使ってお酒を作っている酒蔵が増えている
鑑評会に出品されるようなお酒は山田錦を使ったものが多かったですが、山田錦の産地は限られていて生産量がどうしても限られてしまいます。
そのため最近では地元産の米を使ってお酒造りが盛んになってきました。
北海道の彗星、秋田の銀の星、新潟の越淡麗など、品質が高い米と日本酒がたくさん誕生しています。
地元産のお米にこだわって作られたお酒に注目してみるのも面白いかもしれませんね。
まとめ
・お酒は「酒造好適米」(酒米)と呼ばれる、お酒造り専用のお米で造られている
・(平成29年の)生産量が多い順に、山田錦・五百万石・美山錦・雄町・秋田酒こまちという5品種が日本のトップ5
・有名品種でないお米でも高品質なお酒はどんどん生まれている