日本酒のきほん

【酒母・酛】日本酒造りにおける「酒母」の役割とは

酵母は、 ブドウ糖を分解してアルコールを生成させます。

酒母(しゅぼ)とは、麹、仕込み水、蒸し米をまぜたもの(醪:もろみ)の中で大量の酵母を培養したものです

麹によって蒸し米のデンプンを分解されたブドウ糖を、酒母がアルコールに変えることでお酒は作られます。

お酒造りにおいて、一麹二酛三造りと言う言葉がありますが、この言葉の通り、麹作りの次に大事な作業工程です。(酛(もと)は酒母のことです。)

 

清酒酵母とは

清酒酵母とは、お酒を発酵させる酒母に使用される酵母のことです。

大きく分けて、速醸系と生酛系の2つの種類があります。

速醸系(そくじょうけい)

酵母にしっかりとアルコールを作ってもらうためには、雑菌などを殺菌するためのが必要です。

醪(もろみ)に酵母を入れる前に乳酸を入れる簡易的な方法を速醸系(そくじょうけい)といいます。

乳酸をあらかじめ入れることで雑菌が繁殖したり、野生酵母の働きにより早く発酵が始まったりする心配がありません。

参考

野生酵母とは、植物や空気中に存在する酵母のことです。お酒の質に影響を与えてしまうので酒母を作る途中では雑菌と共に排除(殺菌)する必要があります。

また、生酛系酒母は完成まで30日近くかかるのに対し、速醸系酒母は15日くらいでできるという利点があります。

現在日本で造られている日本酒のほとんどは、この速醸系となっています。

生酛系(きもとけい)

酵母に入れる酸を、自然由来の乳酸菌に生成させてから投入する方法を生酛系(きもとけい)と呼ばれています。

自然環境下で乳酸を生成させるという工程が必要で管理がとても大変ですが、生酛系の酵母は多くの種類の微生物や雑菌に勝ち抜く強さがあり、劣化しにくい安定した質のお酒になります。

生酛系酒母を用いた日本酒の作り方を「生酛造り」といいます。

 

また、生酛系酒母には「山廃系(やまはいけい)」と呼ばれるものもあります。

生酛系酒母を仕込む時には、酛すりと呼ばれる米と麹をすりつぶす作業を行います。酛すりのことを山卸(やまおろし)とも呼ばれますが、これを行わずに作る方法なので山卸廃止を省略して「山廃」と呼ばれています。

山廃系の酒母を使用されている日本酒を「山廃造り」と呼びます。

 

酵母と吟醸香の関係

日本酒は米と米麹と水という原料しか使われていないにも関わらず、香りや味わいは銘柄によって全然違います。

その中でも大きな影響を与えるのが吟醸香と呼ばれる、吟醸酒特有の香りです。

元々穀物であるお米には、果物や花などの香りはありません。ところが、吟醸酒大吟醸酒の中には、果物や花のような香りを放つものがあります。このような香りを作り出しているのも酵母の働きなんです

 

酵母が糖質を分解してアルコールを作り出しますが、麹がデンプンを糖質を作り出す速度は非常にゆっくりなため、酵母は常に空腹の状態になります。

特に吟醸酒は 精米歩合が高いためタンパク質などの栄養成分が少ない上、低い温度で長時間寒さにさらされながら発酵させるため、酵母には常にストレスがかかった状態になります。

そのような状態の酵母がエステル類と呼ばれる物質を生みだし、果物の香りである吟醸香を造りだすことになるのです。

 

協会酵母(きょうかい酵母)とは

協会酵母は日本醸造協会と呼ばれる組織が販売している酵母です。

商標登録名は「きょうかい酵母」とひらがなになっています。

蔵付き酵母と呼ばれる酒蔵で培養された酵母を利用してのお酒造りをされることもありますが、現在の日本のほとんどの日本酒は、きょうかい酵母によって作られたお酒です。

参考:公益財団法人 日本醸造協会

http://www.jozo.or.jp/

 

まとめ

以上、酒母(しゅぼ)の説明でした。

日本酒のラベルには酒母の名前が表示されているものもありますので、酒母によるお酒の味の違いを感じるのも、日本酒の楽しみ方の1つだと思います。

ぜひラベルの酒母の名前にも注目してくださいね。

 

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