ヤシオリの酒とは?
ヤシオリの酒とは、日本書紀や古事記にに書かれている伝承に登場するお酒です。
スサノオノミコトが出雲の国(現在の島根県)にヤマタノオロチ(八岐大蛇)という8つの頭と8つの尾をを持った蛇(竜?)を退治するときに使ったお酒です。
ヤマタノオロチに娘のクシナダヒメが食べられてしまう、ということで悲しんでいた老夫婦に、「八岐大蛇を退治したらクシナダヒメを嫁にしたい」という申し出をして、無事ヤマタノオロチを退治した、というお話です。
スサノオノミコトは、老夫婦に8回醸造した濃いお酒をつくってそれをヤマタノオロチに飲ませ、酔って寝ている間に切り刻むことで退治しました。
日本書紀と古事記では登場人物の漢字表記が違うなど詳細が少し違いますが、大まかな流れは同じような感じのお話です。
ゴジラにも登場した「ヤシオリ」
ヤシオリというと聞き覚えがある人もいるかもしれません。
そう、2016年に大ヒットした映画「シンゴジラ」に登場した「ヤシオリ作戦」です。
「生体原子炉」で動いているゴジラの体を冷やす役割をしている血液を凝固させることによって、ゴジラを停止させる(凍らせる)作戦を、主人公である矢口がヤシオリ作戦と名づけられました。
ポンプ車を使ってゴジラの口から薬剤を流し込むことから、ヤマタノオロチに飲ませたヤシオリの酒にちなんでつけられた作戦名なんだそうです。
かなり伝説や伝承に詳しい人でないと聞き漏らすくらいさらっと登場します。
ヤシオリの酒ってどんなお酒?
「八」はたくさん、「塩」は熟成(アルコール発酵)させたもろみを絞った汁のことで、「折」は繰り返しという意味です。
日本書紀によると、「いろんなこのみ(木の実?)を8回醸してつくる」ということが書かれているそうです。
もろみを絞った汁というのは要するにお酒のことなので、お酒でお酒を仕込むということを繰り返すことになりますが、その過程でアルコール発酵は途中で止まってしまうことになります。
アルコール発酵を行う酵母はある程度のアルコール濃度になると、自分が作り出したアルコールによって殺菌される形で死滅することで、アルコール発酵が止まってしまうためです。
材料の糖がアルコール発酵しないで残るので、甘いお酒になったのではないかと思います。
水の代わりにお酒でお酒をつくる、というのは現在「貴醸酒」というお酒でも使用されている手法です。
ちなみに、貴醸酒もかなり甘いお酒です。
参考:【貴醸酒】特徴的な味わいの秘密とネット購入できる銘柄7選
ヤシオリの酒を販売している酒蔵がある!
今、日本にはヤシオリの酒をつくっている酒蔵があります。
木次酒造と國暉酒造という2つの酒造会社です。
いずれも島根県の酒蔵です。
木次酒造株式会社
木次酒造(きつぎしゅぞう)がつくっているヤシオリの酒(八塩折之酒)はインターネットで調べるとわずかに情報が出ていますが、限定商品なのか木次酒造さんのホームページ等では案内がされていません。
五穀が入ったにごり酒なんだそうで、どんな味なのかがとても気になります。
参考:木次酒造株式会社
國暉酒造株式会社
國暉酒造(こっきしゅぞう)は現在もヤシオリの酒(八塩折之酒)を製造、販売しています。
貴醸酒の技術を応用して、お酒でお酒を醸することを繰り返してつくられたお酒です。
使用するお米の量に対して、仕上がるお酒の量が少ないため、結構高価なお酒に仕上がっています。
まとめ
以上、ヤシオリの酒のお話でした。
日本書紀、古事記の時代から、現代の日本酒造りの原型のような技術があったことに驚かされます。
日本における神話とお酒の話は調べると面白い関係が見えてくるので、また当サイトで取り上げてみたいと思います。