日本酒のきほん

「三増酒」ってなに? 日本酒の悪評の原因? 

三増酒(さんぞうしゅ)という言葉を知っていますか?三倍増醸酒(さんばいぞうじょうしゅ)、三倍増醸清酒(さんばいぞうじょうせいしゅ)なども呼ばれています。

あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、これが日本人の日本酒離れの原因の1つといわれています。

ここでは、三増酒についてお話しします。

普通酒とは

日本酒を大きく分けると、「特定名称酒」と「それ以外」に分けられます。

日本酒には「純米吟醸酒」「特別純米酒」「本醸造酒」などの「特定名称酒」と呼ばれるお酒があります。特定名称酒は酒税法と呼ばれる法律で定められた特別な造り方で造られたお酒です。

参考:国税庁 「清酒の製法品質表示基準」の概要

https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/seishu/gaiyo/02.htm

この「それ以外」にあたる日本酒が普通酒と呼ばれるお酒になります。

3等級以下の酒米精米歩合は70%以上で使用し、糖類、調味料等を使用し、20~40%の醸造アルコールを添加して造られます。

そしてその時に、三増酒と呼ばれるお酒も添加されているのです。

 

日本酒造りにおいて、お米以外の原料で造られた醸造アルコールをアルコール添加物といいます。この醸造アルコールの添加の歴史は、江戸時代にに柱焼酎と呼ばれていた、清酒に焼酎を加えて保存性を良くする手法からきているとされています。日本酒の腐造(日本酒が濁り、酸化、臭みの発生を伴う質の劣化のこと)を防ぐため、腐造を起こす菌を押さえるために焼酎を添加されていました。

日本酒が腐造を起こすことは酒蔵の経営に致命的な影響を与えかねない大問題だったため、このような技術が生まれた事情があります。

 

三増酒(さんぞうしゅ)とは

太平洋戦争前後の米不足の時代に、醸造した日本酒にさらに2倍の醸造アルコールを足し、結果的に3倍の量の酒を造られました。醸造された日本酒から3倍の量のお酒を造ることができたので、三増酒という俗称がつけられました。

三増酒だけではとても飲める代物ではないので、糖類、調味料、酸味料、グルタミン酸ナトリウム(いわゆる、うまみ調味料)などを加えて味を整えたものが、現在「普通酒」として販売されているお酒です。

現在は、「三増酒」は法律上日本酒(清酒)として販売することはできないので、これだけを商品として出荷している酒蔵はありませんが、「アル添酒(アルコール添加酒)」とブレンドして、大量に安価で販売されています。

 

太平洋戦争中や戦後に消費されていたお酒のほとんどは日本酒で、米不足の時代に大量のお米を使う日本酒の作り方だと生産量が足りないという事情があったために、やむを得ず造られたお酒でしたが、実際は戦後もかなり長い期間造られていました

安価で製造できるお酒だったため、三増酒は利益追求のために造られるようになり、醸造アルコールを大量に加え、薄くてまずいお酒をお金を稼ぐために売るということが行われた結果、日本酒は「まずい」「悪酔い」するという負のイメージを持たれる原因になりました。

その結果、日本酒の生産量が1975年をピークに、現在に至るまで右肩下がり下がり続けるという事態になったのです。

参考:酒文化研究所 news letter 49号

http://www.sakebunka.co.jp/archive/letter/pdf/letter_vol49.pdf

三増酒入りのお酒を見分ける方法

見分けたい場合はラベルの原材料名を見てみましょう。

パック酒などの安いお酒のラベルを見ると、「米」「米麹」「醸造アルコール」のほかに、糖類(醸造用糖類)などの添加物が書かれているお酒があります。これらのお酒は「三増酒」が増量のために添加されています。

ラベルを見れば簡単に見分けることができるので、ぜひ気にして見てみてください。

 

美味しい日本酒を選びたいなら

もし美味しいお酒を飲みたいということであれば、「特定名称酒」を選べば安心です。

「本醸造酒」「特別本醸造酒」「吟醸酒」「大吟醸酒」は、「米」「米麹」「醸造アルコール」だけで造られています。本醸造酒に添加されている醸造アルコールは10%までと定められています。

 

また、「純米酒」「特別純米酒」「純米吟醸酒」「純米大吟醸酒」「米」「米麹」のみで造られています。これらをまとめて純米酒と呼ぶこともあります。

もしお酒を手に取る機会があれば、ラベルの原材料名を見てみてくださいね。

価格は上がってしまいますが、日本酒があまり得意でないけど本当に美味しいお酒を飲みたい、ということであれば「純米酒」を飲むのがおすすめですよ。

 

まとめ

以上、三増酒のお話しでした。

安価な日本酒購入量や居酒屋などでの消費量はだんだん減ってきているため、日本酒の消費量は年々減ってきています。

しかし、「純米吟醸酒」などの高級な日本酒に限っては横ばいか少し増えてきているというデータもあります。

美味しい日本酒であれば、若い人や日本酒に苦手意識を持っている人でも受け入れられるということを示していると言えますね。

日本酒が苦手な人ほど良いお酒を飲んでほしいなと思っています。

 

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