日本酒の成分の80%は「水」です。
日本酒の成分はアルコール、糖分、アミノ酸は残りの20%ほどになります。
米と米麹はもちろん大切な原料なのですが、日本酒の8割を構成する水もとても重要な原料となっているのです。
ここでは日本酒を作るための水「仕込み水」について解説します。
仕込み水と日本酒の味わいの関係について説明します!
日本酒を作るための水「仕込み水」
日本酒を仕込むためには多くの水が必要です。
直接日本酒の原料となる水のことを仕込み水と呼びます。
日本酒を作るためには仕込み水の他に、お米を洗うための水、お米をつける水、酒母に使う水、割り水(出来上がったお酒のアルコール度数を調整するために加える水) などが必要になってきます。
この他にも水は、酒瓶の戦場、釜や桶などの道具を洗う水、 道具を熱湯殺菌するための水、酒蔵の内部を清掃するための水なども必要となっており、すべてを含めると膨大な量の水が必要になります。
豊富な湧き水が得られる酒蔵では、これらにも仕込み水と同じ水を使います。
同じ醸造酒でも、ワインは仕込みに水を使いませんので、水の品質が出来上がったお酒の品質に関わるというのは日本酒の大きな特徴となってます。
このような事情があるため、「お酒造りに適した湧き水が近くにあるかどうか」ということが、昔から酒蔵を作るための大切な条件なっていました。
日本中に美味しいお酒を造る酒蔵があるのは、仕込み水に恵まれた土地が日本中にたくさんあるということでもあります。
醸造用の水は水道水よりも基準が厳しい
日本は水道水が直接飲める、世界的に見ても珍しい国です。
仕込水に使用する醸造用水は、そんな水道水の基準よりもさらに厳しい条件が求められています。
例えば鉄、マンガン、銅といった金属はお酒の質が劣化を招きます。これらが少しでも水に入っていると、酒は黄褐色になってしまい味も悪くなってしまいます。
鉄分もお酒に色がついてしまうので、 水道水の基準よりも1/15以下の含有量でなければならないという厳しい基準があります。日本酒と鉄はとても相性が悪いため、日本酒作りの現場では水だけでなくタンクや桶と言った道具も釘などを一切使っていません。
日本酒を貯蔵するタンクもホーロー製のものが多いのですが、ホーローの表面が割れると内部の鉄が染み出す可能性があるので日々チェックを怠らないそうです。
日本酒を作るための水は、このような厳しい基準をクリアした水でなければならないのです。
お酒造りに適した水とは
お酒造りに適した水は、マグネシウム、カリウムといった鉱物性のミネラルを豊富に含んでいる水です。
日本酒は仕込みに用いる水で口当たりが大きく変わってきます。
酒蔵によっては地下水や涌き水だけでなく、ミネラル豊富な海洋深層水や深さの違う井戸から水質の異なる水を使い分けている場合もあります。
灘の男酒、伏見の女酒という言葉があるそうです。これは硬度の高い水で作ったお酒ははっきりとした辛口、硬度が低い伏見の水で仕込んだ京都の酒はまろやかで飲んだ感じが柔らかくなるという意味だそうです。
ポイント
カルシウムやマグネシウムなどのミネラルがたくさん入っている水のことを硬水、それと比較して、ミネラル分が少ない水を軟水といいます。
1リットルあたりに何mgのミネラル分が入っているかということを「硬度」という数値で表します。
WHO(世界保健機関)は、硬度が120mg/l以下水を「軟水」、120mg/l以上の水を「軟水」という基準で規定しています。
硬度が高い水に多く含まれているミネラル分は、酵母の栄養分となることで発酵が早く進みやすくなります。これによってキレがいい辛口の酒になるひとつの要因となります
また、硬度の低い水は、発酵進ませるミネラル分が少ないので発酵が緩やかに進むため、甘みを残したソフトなお酒になります。
仕込み水として有名な「宮水」とは
兵庫県神戸市(灘地方)で古くから酒造りに適した水として「灘の宮水」があります。
酵母の増殖に欠かせないカルシウムやマグネシウムに加え、リン酸やカリウムの含有量が高く、しかも鉄分が少ないというしっかりしたお酒を作るのに適した水です。
宮水は花崗岩層を通った六甲山系の伏流水で 、軟水が多い日本では珍しく高度が高い水です。
「六甲のおいしい水」というミネラルウォーターでも有名です。
参考
伏流水とは、山から下ってきた河川や山すその下にある、ごく浅い砂礫層(されきそう:荒い砂を含んだ地層)を流れている地下水のことです。
宮水はミネラル塩を適度に含んでいて、 このことも灘のお酒の質を安定させ、江戸などの遠くに運んでも劣化しない強いお酒を作れていた要因と言われています。
灘の酒蔵のほとんどは、兵庫県西宮市にある宮水の井戸を所有していてタンクローリーで汲んで運んでいるそうです。
西宮の水という呼び名が縮まったのが「宮水」という呼び名になんだそうです。
ミネラルウォーターとしての硬度は37でまろやかな軟水なのですが、宮水の硬度は180にもなります。
宮水という仕込み水の存在は、灘のお酒を大きなブランドに押し上げました。
灘の酒蔵は このような酒造りに適した宮水の井戸、水源を守りながら、現在も高品質なお酒を作り続けています
まとめ
ミネラル分は酵母の栄養分になりますので、以前は軟水でお酒を仕込むのは難しいことでした。
しかし、現在の発展し続ける醸造技術は、軟水であればそれに合った美味しいお酒を造ることを可能にしています。
例えば、新潟で造られたお酒はは硬度の低い水を活用した、水のようにスッキリした美味しさで有名だったりします。
全国の酒蔵の研究と努力の結果、日本中の酒蔵ので美味しいお酒を楽しむことができるわけですね。
日本酒を選ぶときには、ぜひ水の違いにも注目してみてくださいね。