獺祭

【獺祭】自主回収の原因と対応策と加水に関する誤解についてすべて解説

獺祭アイキャッチ

2019年の9月にこんなニュースが出ました。

参考:「獺祭」26万本を自主回収へ 朝日新聞デジタル

このニュースに対するネットでの反応に、

「獺祭はお酒に水増しをしていたの?」

というものがあったので、改めてこの問題の経緯を説明してみたいと思います。

 

獺祭が自主回収を行った理由

2019年9月、山口県の旭酒造株式会社は、日本酒の人気銘柄「獺祭(だっさい)」にアルコール度数が異なる商品があったとして、2019年の4月から7月に作られた「獺祭」の26万本を回収するという発表をしました。

獺祭 純米大吟醸 磨き三割九分

獺祭 純米大吟醸45

獺祭 等外

獺祭 等外23

これらの4種類が回収の対象です。

通常の「獺祭」はアルコール度数が16%になるように調整して出荷されるのですが、17%~12%くらいのものが混在して出荷されたのだということでした。

年間出荷量の3%くらいのお酒が回収され、回収されたお酒はすべて廃棄されるとのことです。

 

発酵が終わった日本酒はおよそ17%のアルコール度数になり、それを16%程度に加水して出荷されるのですが、加水した後に混ぜるのを怠ったために、その後瓶詰めしたお酒のアルコール度数に偏りが出たのが回収の原因です。

 

加水はお酒の水増しではない

ネット上の反応を見てみると、

「日本酒に水を足して水増しして売っている?」

という反応がありましたが、それは誤解です。

 

日本酒は、麹造り→麹と米と水を混ぜて醪(もろみ)をつくり酵母の力で発酵させる、という工程で作られます。

醪(もろみ)のアルコール度数が20%くらいまで上昇すると酵母がアルコールによって死滅することで発酵が止まりお酒が完成します。

その後、水を加えて濃度を調整して日本酒は完成されるのです。

 

つまり、日本酒を作る工程の中に水を加えて濃さを調整する「加水」という工程があるので、加水=お酒の水増しというわけではありません。

アルコール度数15%から16%くらいの日本酒が最も多いのですが、これらのお酒はすべて加水の工程が行われているのです。

ちなみに、加水を行われていないお酒のことを「原酒」といいます。

原酒はおおよそ20%くらいのアルコール度数で出荷、販売されている日本酒です。

ちなみに、獺祭は20%近くまで発酵させることでお酒の質が荒くなる、という理由で16.5%~17%まで発酵させるそうです。

 

ちょっと考えてみれば、水増しをすれば当然お酒の味が薄くなってしまうわけで、そんな薄いお酒がお客様に高い評価を受けるということはあり得ないことがわかります。

 

獺祭を安心して購入していい理由

今回の問題が発生した経緯を旭酒造の社長自らがが「蔵元日記」というメールマガジンで発表しています。

こちらを読んでくださいで済むお話かもしれませんが、長いのでここでもざっと解説します。

参考:蔵元日記 メルマ!

2020年の1月まではこちらのリンクから読むことができます

今回の問題は、担当者が加水した後に攪拌する、つまり混ぜてお酒の質を均一にするということを怠ったことに原因があります。

加水を行うときにタンクに流れる水が勢いがあったため、攪拌をしなくてもいいと担当者が勘違いしたそう。

 

また、検査担当者は加水が行われる現場から離れた位置で仕事をしていたため、加水、攪拌の作業を行う人の要請がないと検査が行われない段取りになっていたことも、今回の問題が起こった原因だそうです。

酒蔵に残っているお酒を検査してみたところ、規定以下のアルコール度数のお酒は100本中2~3本の割合で、黙っていたらバレないお話だったかもしれませんが、旭酒造は回収する決断をしました。

 

今回の問題を受けて、

撹拌不足に関しては担当者本人だけでなく、別の人間が必ず確認・記帳したうえで次の工程に移行する

という手順に変更したそうです。

いわゆる「ダブルチェック」というある意味当たり前のことになるのですが、これまで旭酒造では人間がミスをするという前提でシステムを考えていなかっため、ある意味当たり前ともいえるチェック体制を敷いていなかったんだそうです。

また、また、基準に達していないお酒を以前はランク落ちさせて販売する(一番安い獺祭大吟醸45はほかの酒とブレンドさせる)ということを行っていたのを、今後はすべて廃棄するそうです。

 

たまに獺祭に対するレビューで、

獺祭は味が落ちた

昔の方がおいしかった

という書き込みを目にすることがありますが、このような変化を察知した昔からのファンの意見だったのかもしれませんね。

日程に余裕がないことを理由に、昨日と同じやり方で同じ作業をこなすことが良いことになっていたことを反省し、

新しい技法に挑戦する

3年以内に、ほかの蔵に行っても当時として通用する社員を5人育成する

ということを行うそうです。

 

百数十人いるスタッフが麹、もろみとそれぞれの部門の専門家として分かれてしまっている状態を、製造部長の下に2つのチームができて競争を行い、もう一度獺祭の酒造りを追求していく。

これからは、このような体制でお酒の質の向上を図っていくとのことです。

 

これまで、企業の不祥事のニュースをたくさん見てきましたが、社長自ら問題の内容や対策の詳細をここまで明らかにした会社をあまり見たことがありません。

獺祭は安心して購入できるおいしい日本酒だと言っていいと思います。

願わくば、以前の獺祭を知っているファンを納得させられるような、質の高いお酒になるといいですね。

 

 

以上、獺祭の自主回収のお話でした。

問題の原因、同じ問題を起こさない体制づくりをしたこと、それらを社長自ら発表したことは素直にすごいことではないかと思います。

獺祭がこれからどれだけおいしいお酒になるのかが楽しみです。

 

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