目次
アル添酒ってなに?
アル添酒とは、アルコールを添加したお酒のことです。
日本酒の中でも純米酒はお米、麹、水だけでできているお酒なのですが、普通酒、本醸造酒と呼ばれるお酒は「醸造アルコール」を添加されています。
添加という言葉は食品添加物を連想させるイメージが悪い言葉かもしれませんね。「純米酒」以外の日本酒では、通常原材料に醸造アルコールが記載されているのですが、実はこれは添加物ではありません。
完成した日本酒に添加するのではなく、お酒を搾る前の醪(もろみ)に副原料として添加されています。
醸造アルコールとは?
日本酒に添加される醸造アルコールは、サトウキビなどから砂糖が造られるときの残りの液体(廃糖蜜と呼ばれています)や穀物のデンプン発酵させて繰り返し蒸留して作られた蒸留酒で、焼酎(焼酎甲類)と同じ様なものです。
完成したお酒を何度も蒸留することによって、アルコール分100%に近い純度の高いアルコールを造った後、30%程度にに調整して醪(もろみ)に添加されます。一度アルコール純度を100%に近い純度まで蒸留することで、味や香りがほぼ無いアルコールになります。
本醸造酒や吟醸酒を作る際に、もろみに加えることができる醸造アルコールの量は、お酒の原料の白米の重量の10%を超えないというルールがあります。(これを超えているお酒は普通酒に分類されます)
アル添の起源は「柱焼酎」
日本酒に醸造アルコールを加えるという手法は、江戸時代の初期に行われていた「柱焼酎」と呼ばれる、醪(もろみ)の酒粕を蒸留して作った焼酎を日本酒に加えることで、腐造を防ぐ、味わいを軽快にする、風味が良くする手法からきていると言われています。
なぜアルコールを添加するの?
日本酒は醪(もろみ)の酵素がアルコールを生成して造られるのに、なぜ醸造アルコールの添加が必要なんでしょうか?
日本酒に適度にアルコールを添加すると、酸味が抑えられて後味がすっきりとした風味がいいお酒にすることができます。また日本酒に含まれている香りは水に溶けにくくアルコールに溶けやすいという特徴があるため絞ると酒粕に移ってしまうのですが、アルコールを添加することでそれをお酒にとどめる効果があるので香りのよいお酒にすることができるという利点もあります。
全国新酒鑑評会に出品するお酒は吟醸酒の原酒と定められているため、少量の醸造アルコールを添加することで香りを良くしたお酒が出品されることが多いそうです。
つまり、醸造アルコールの添加はコスト引き下げという目的もあるのですが、主な目的はお酒の質の向上が目的とするものなんです。
醸造アルコールを添加したお酒は悪酔いしやすい?
醸造アルコールの作り方と添加方法をお話ししてきましたが、醸造アルコールは悪いものではありません。ですので、アル添酒が悪酔いしやすいというのは迷信です。
同じアルコールの含有量であれば、同じ量を飲めば同じだけ酔う可能性があります。
酔い方については摂取したアルコールの量が関係していますので、飲みすぎないということが最も大切なことになります。
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アル添酒の評判が悪くなった理由は?
日本酒へのアルコール添加が普及した最大の要因は、戦争中に酒税をきっちり徴収するために、腐造を防ぎつつお酒の生産量を増やすためといわれています。
当時、「三増酒(三倍増醸酒)」と呼ばれる、米から生成されるアルコールの2倍の醸造アルコールを加えることで、原料の3倍の量のお酒にした質の低いお酒が大量に作られました。当時の日本で徴収されていた税金の中では「酒税」の割合が最も大きかったため、このようなことが行われていた、という事情がありました。
戦争が終わった後の時代もコストカットを主な目的として、しばらくこのような質の低い日本酒が造られ続けました。お米やお酒の生産量が不足して闇酒が横行した時代には必要な措置だったのかもしれません。
食品衛生法のような食品や飲料を規制する法律やシステムの整備も現在のように整っていなかったので、使用されていた原料も粗悪なものだった可能性もあり、そのことが原因で「アル添酒は悪酔いする」という迷信が生まれたのだと思います。
現在販売されている日本酒(特に特定名称酒)は法律で製造方法が厳密に規制されているので、他の種類のお酒と比べて特別悪酔いするということはありません。
醸造アルコールを添加した本醸造酒にも本当に美味しいお酒はありますし、安心して楽しんでほしいなと思います。
まとめ
・アル添酒は醸造アルコール(焼酎のようなもの)を添加したお酒
・アルコールを添加したからといって、悪酔いしやすいということはない